インターナショナルCCSナレッジセンター: ペトラ・ノヴァで92.4%の回収率 - CCSの成果


以下に、プロフェッショナルエンジニアであるコーウィン・ブルース (Corwyn Bruce) がインターナショナルCCSナレッジセンター (International CCS Knowledge Centre) を代表して発表した声明を掲載。

成功の定義。一貫してCO290%を回収しているのであれば、成功と言える。

サスカチュワン州レジャイナ発 , Sept. 04, 2020 (GLOBE NEWSWIRE) -- 石油価格がペトラ・ノヴァ (Petra Nova) の二酸化炭素回収・貯留 (CCS) 事業を一時停止する決定に与えた影響に焦点を当てながら、同プロジェクトの事業成果について述べたい。

妥当な技術レビューによる控えめな評価はしばしば、イノベーション、設備の一新、および最適化における相応な評価を欠いていることがある。ペトラ・ノヴァのCCS施設 (NRGとJX日鉱日石エネルギー (JX Nippon) による共同事業) のケースがそうであると言える。同施設に関する一部の論評では、最初の3年間に稼動停止が何度もあったと言われている。しかし、現場を知っている関係者から話を聞けば、このプロジェクトが評価に値することが分かる。

私は、SaskPowerのバウンダリーダム3号機CCS施設 (BD3: Boundary Dam 3) で二酸化炭素回収システムを設計および構築したエンジニアリングチームの一員であった経験から、独自の視点を提供することができる。同施設は石炭火力発電所と統合され、この種の施設としては、世界初のものである。また、私は同施設の最適化について継続的に助言を提供する立場であるだけでなく、インターナショナルCCSナレッジセンターでチームを指揮し、世界各地で学んだ教訓を共有して次世代CCS施設の展開をサポートし、世界的な気候目標の達成を支援している。

ペトラ・ノヴァを保留動作停止状態にする決定に影響を与えた、市場要因、電力価格、石油価格などの外部阻害要因の可能性を理解することが重要である一方、二酸化炭素回収の専門家として、テクノロジーの実行可能性と機能する理由を強調したいと考える。 

同施設は、目標を達成するように設計されており、実際、達成している。

素晴らしいニュースは、ペトラ・ノヴァが92.4%の回収効率を記録していることである (ペトラ・ノヴァの最終技術報告書iは米国エネルギー省に提出済み)。これは、90%という目標を上回るだけでなく、同施設における回収プロセスの長期的な信頼性を示している。CCS施設は順調に稼働しており、他の設備で課題であると判明しているリスク項目の多くを克服している。

実際のところ、ペトラ・ノヴァの回収施設は、パフォーマンス基準をしっかり遵守しており、良い方向で上回ってさえいる。要するに、同施設は計画したことを遂行できているだけでなく、それ以上のことを達成している。予想よりも高い回収率に加えて、際立つ点は次のとおりである。予想よりも低い電力消費と蒸気要件。要求される99%を超えるCO2純度。揮発性有機化合物 (VOC) の排出率は年間2.8トンで、これは、オゾンに関する米国国立大気質基準のテキサス州行政法 (Texas Administrative Code for the National Ambient Air Quality Standards) 30章の規則を上回っている。ii

さらに、アミン消費量は仕様を満たしている。溶剤ベースの回収システムで使用されるアミン化学物質は、分解され、CO2を排煙流から分離する化学反応を完了する能力を失う傾向がある。  これは、回収率の低下、化学置換の増加、およびメンテナンスコストの増加によって判明する場合がある。  ペトラ・ノヴァの二酸化炭素回収施設では、アミン消費量が予想よりも多いという問題は報告されていない。

BD3において学ばなければならなかったことの1つは、開始したばかりのプロジェクトで発生する予期しない事態を克服することだった。私たちは安全性と信頼性を向上させることに成功し、その結果、設備の能力向上と稼働コストの削減に焦点を移すことができた。しかし、ペトラ・ノヴァでは、施設の全体的な成果は良好、いや、それ以上に見える。そのためペトラ・ノヴァ施設は、稼働した時点で、一貫して目標を達成または上回ることができる。学んだ貴重な教訓を共有することは、私たちがペトラ・ノヴァのために行うことができたことの一部であり、その成功を強調し、引き続きCCS施設の稼働を見守ることが重要である。

準備、可用性

BD3での経験と同様に、ペトラ・ノヴァの回収施設の可用性は、時間の経過とともに着実に改善を示している。CCS施設の話題において、パフォーマンス、可用性、信頼性は必ず含まれる項目である。多くの場合、ペトラ・ノヴァとBD3の両方で目にしたように、回収されたCO2の量は、回収施設の信頼性における必要指標ではない。実際、稼働一時停止期間は、非回収施設の問題の多くに関連していることがこれまでに示されている。2018年にバウンダリーダム発電所 (Boundary Dam Power Station) が激しい嵐に見舞われたときや、ハリケーン・ハービーによりペトラ・ノヴァが稼働一時停止状態になったことがある。

技術データを調べたところ、二酸化炭素回収プロセスは、施設停止期間のほんの一部の日数にしか関与していないことが判明している。ペトラ・ノヴァの稼働1年目である2017年、運用を調整するための立ち上げ期間を必要とするすべての新しいプロジェクトと同様に、回収プロセスが原因となった合計損失時間は41日 (全日換算) であった。2018年には34日に減少し、2019年には29日に減少した。つまり、365日のうち29日は92〜93%の可用性に相当し、これは世界で2番目、この規模の施設では初となる。これを始動わずか3年で成し遂げたことは素晴らしいことである。特に、この規模の施設の設備は、規模の大きさと特殊な性質により、多くの場合、長いリードタイムを必要とし、変更に更なる時間を要する場合がある。

ペトラ・ノヴァにおけるその他の一時停止期間は、具体的には併給発電設備、石炭ユニット、油田、および天候などの他の要因に関連していた。CO2回収施設の信頼性と、プロセスを実行するための蒸気を供給する併給発電設備の信頼性を混同しないことが重要だ。

一方、BD3では、7月には、CCS施設がその月の99.8%でオンラインになり、水冷の問題によりブースターファンが一時停止した際に1.5時間オフラインとなった。iii 7月中において、同施設は75,503トンのCO2を回収し、1日あたりの平均回収率 (施設のオンライン時) は2,435トン、ピーク時の1日の回収率は2,627トンを記録した。

BD3やペトラ・ノヴァなどの先駆的なプロジェクトには、次回ラウンドでの大幅な改善のためのプラットフォームを提供するという重要な役割がある。第2世代CCSに関する報告書に記載されているように、Shand CCS実現可能性調査 (Shand CCS Feasibility Study) ivでの経験は、稼働直後のパフォーマンス向上を実現するための設計が適応していることを示している。

1世代の課題を乗り越える

ペトラ・ノヴァの技術レポートをさらに確認すると、BD3での経験と非常に似ているため、よくある課題を特定することができた。  問題として発生し、その後対処された事態の多くは、BD3でも対処されていた。私たちは、この重要な習得知識を提供し、新しい施設に適用したいと考えている。これらの予防策は確実性を高め、コストとリスクを低減するからである。 

両施設で常に報告された信頼性の問題はすべて、化学的な問題ではなく、機械的な問題であったことに注意することが重要である。あらゆる産業施設における機械設備の信頼性は通常、これと同様の成熟度曲線に従う。これは嬉しい報告である。機械的な問題は解決可能であり、実際そのような問題はこれまで解決されているからである。私たちの経験と理解は深まっており、次に同じ設計を行う際に伝えることができる。CCS施設の建設を考えている者に対して、このような問題はもう発生しないことを保証できるのだ。

たとえば、冗長化により、稼働一時停止時間を大幅に短縮できる。CCSが世界中で同じ施設をより多く建設し、より多くの知識を得るまでは、一部の冗長化は賢明な検討事項となる。注目すべき冗長化の1つは、ペトラ・ノヴァとBD3の両方においてパフォーマンスの低下と稼働一時停止時間の原因となったプレート・枠熱交換器の信頼性である。BD3では、これは2018年までに大幅に改善された。

CCSの両施設に共通する信頼性に関する問題のもう1つの例は、ブースターファンブレードの背面でのスケーリングの開発であった。このスケーリングにより振動が発生し、その結果、洗浄作業のための稼働一時停止に至った。BD3での解決以来、私たちは、修理が簡単で安価なソリューションについて、ペトラ・ノヴァや他の顧客から助言を求められ、提供してきた。

3つ目の例は、材料の互換性に不一致があるCO2コンプレッサーインタークーラーの問題である。症状は異なるが、ペトラ・ノヴァとBD3の両方に、CO2コンプレッサーインタークーラーの構成材料に関する問題があった。これは、実地体験と習得した必須知識の価値を強調している。私たちは、このような知識を、次回の建設に向けて適切で堅牢な材料を理解するために顧客に提供しなければならない。

冗長性と信頼性の問題における整合性は、次の3つの重要な傾向を示している。1) 経験は、第1世代テクノロジーに取り組む必要性を示している。2) 成果と適応は、信頼性は時間とともに向上することを示している。3) 私たちは今、問題の解決方法を理解し、継続的に学習しており、第二世代の二酸化炭素回収において進歩を飛躍させている。

排出は待ってくれない

ペトラ・ノヴァの操業一時停止は、回収施設が稼働を停止している際に排出物が大気中に放出されていることを意味する。CCSは、電力セクター (CO2のグローバル排出量32%にあたる)vにおいて意義ある役割を持つ。地球温暖化を1.5°Cに抑えるには、大規模で排出集約型の産業用発電プロセスを大幅に脱炭素化する必要がある。CCSはこれを行える。

テクノロジーによる成功が実証されており、リスクとコストが削減され、簡単な導入に向けて急速に進歩している中、新しいCCS施設の立ち上げと既存施設の継続的な運用において、まだ十分な「賛成」が存在しないことは、科学/工学の観点から見てもどかしい。

コーウィン・ブルース (Corwyn Bruce) は、インターナショナルCCSナレッジセンターのプロジェクト開発およびアドバイザリーサービス担当バイスプレジデントであり、BD3 CCS施設での作業に関する実践的な専門知識を持ち、Shand CCS実現可能性調査 (Shand CCS Feasibility Study) の主執筆者である。 

インターナショナルCCSナレッジセンター (ナレッジセンター) について: インターナショナルCCSナレッジセンター (International CCS Knowledge Centre) は、世界的なGHG排出量を削減するための大規模CCSに関するグローバルな理解と展開を推進する権限を持ち、完全統合型のバウンダリーダム3号機CCS施設および包括的な第2世代のCCS調査 (Shand調査) から得られた知識と経験に基づき、大規模CCSプロジェクトおよびCCS最適化を実施するノウハウを提供する。ナレッジセンターは、独立した取締役会の指揮の下、2016年から運営されており、BHPとSaskPowerによって設立された。詳細情報の参照先: https://ccsknowledge.com/

報道関係者向けの問い合わせ先

インターナショナルCCSナレッジセンター
ジョディ・ウーラム (Jodi Woollam)
広報および報道関係担当責任者
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i W.A. Parish Post-Combustion CO2 Capture and Sequestration Demonstration Project Final Technical Report (エネルギー省に提出済み)、https://www.osti.gov/biblio/1608572-parish-post-combustion-co2-capture-sequestration-demonstration-project-final-technical-report

ii テキサス環境委員会 (Texas Commission on Environmental Quality)、https://www.tceq.texas.gov/

iii SaskPower、BD3ステータス最新情報: 2020年7月、2020年8月12日、https://www.saskpower.com/about-us/our-company/blog/bd3-status-update-july-2020

iv Shand CCS実現可能性調査、https://ccsknowledge.com/initiatives/2nd-generation-ccs---shand-study

v 国際エネルギー機関、エネルギー技術展望2017 (International Energy Agency, Energy Technology Perspectives 2017)、https://www.iea.org/reports/energy-technology-perspectives-2017

この発表に関する写真はこちらで入手可能: https://www.globenewswire.com/NewsRoom/AttachmentNg/9fb5e6d2-cd7e-42f3-8534-9a8c500efca0