UAB、遺伝子編集されたブタの腎臓を脳死状態のヒトに臨床レベルで初めて移植したことを発表


ニュースハイライト

UABの研究者らが、ブタからヒトへの腎臓移植でいくつかの世界初の成果を達成:

  • 遺伝子組換のブタの腎臓を脳死状態のヒトの体内に移植したことに関する、初の査読付き・発表論文
  • ブタからヒトへの腎移植において、ヒトでの直接の臨床グレードの治療に適した腎臓となる可能性のある10個の重要な遺伝子編集を施した遺伝子組換腎臓を用いた初の研究
  • UABが開発した異種移植前の適合性試験の初の検証
  • 前臨床のヒトモデルとして脳死を確立した、初の査読付き・発表研究

本試験は、第I相臨床試験と同等の基準を満たすように計画・実施され、可能な限り従来のヒトからヒトへの移植の各行程を組み込んだ。重要なのは、本試験では、脳死状態のレシピエントの腎臓を取り除き、遺伝子組換のブタの腎臓と交換したことである。

UAB、遺伝子編集されたブタの腎臓を脳死状態のヒトに臨床レベルで初めて移植したことを発表

アラバマ州バーミンガム発, Jan. 21, 2022 (GLOBE NEWSWIRE) -- アラバマ大学バーミンガム校 (The University of Alabama at Birmingham) マルニックス E. ヒールシンク医学部 (Marnix E. Heersink School of Medicine) は、遺伝子組換された臨床グレードのブタの腎臓を、脳死したヒトに移植し、レシピエントの生来の腎臓と入れ替えることに成功したという、初めての査読付き研究結果を発表した。この有望な結果は、世界的な臓器不足の問題を解決するための異種移植の可能性を示すものである。

American Journal of Transplantation誌に発表掲載された研究では、UABの研究者らが、遺伝子組換ブタの腎臓をヒトに移植するための初のヒト前臨床モデルを検証した。この試験の被験者では、生来の腎臓を摘出した後、遺伝子組換のブタの腎臓2個を腹部に移植した。これらの臓器は、病原体のない施設で遺伝子組換ブタから採取されたものである。

UABヒールシンク医学部の学部長であり、UABヘルスシステムおよびUAB/アセンション・セント・ヴィンセンツ・アライアンス (UAB Health System and UAB/Ascension St. Vincent’s Alliance) のCEOであるセルウィン・ヴィッカース (Selwyn Vickers) 医学博士は次のように述べている。「当校のパートナーとともに、今日発表されたような結果を期待して、10年近くにわたり異種移植に多額の投資を行ってきました。本日の結果は、人類にとって素晴らしい成果であり、異種移植を臨床の領域に進めるものです。今回の試験で、我々の研究チームは、異種移植の分野を推進するために、遺体モデルに大きな可能性があることも実証しました。」

今回初めて、移植されたブタの腎臓は、ヒトへの移植に適した腎臓となる可能性のある10個の重要な遺伝子編集を施したブタから採取された。このプロセスは、この処置の長期的な実行可能性と、そのような移植が実際にどのように機能するかを示すものである。移植された腎臓は、血液をろ過し、尿を生成し、重要なことに、即座に拒絶反応を起こすことはなかった。腎臓は、移植から77時間後に研究が終了するまで生存状態であった。

UABの外科 (Department of Surgery)総合移植研究所 (the Comprehensive Transplant Institute) の所長であり、本研究の主任外科医であるジェイミー・ロック医学博士 (Jayme Locke M.D.) は次のように述べている。「医学の歴史を変えるこの瞬間は、臓器不足の危機に対する最善の解決策である異種移植の分野において、パラダイムシフトと大きな節目を意味します。重要な知識のギャップを解消し、末期腎不全患者を対象とした臨床試験を開始するために必要な安全性と実現性のデータを得ることができました。」

免疫拒絶反応を軽減するためにブタの遺伝子を編集することで、ブタからヒトへの臓器移植が可能になり、臓器不全や病気、怪我に直面している何千人もの人々に救いの手を差し伸べることができる。ブタの寿命は30年で、繁殖が容易で、臓器の大きさは人間と同程度になりうる。 

遺伝子組換のブタの腎臓は、ヒト以外の霊長類でも広く実験されている。ヒト以外の霊長類での試験に加えて、ヒトの前臨床モデル試験で遺伝子組換ブタの腎臓を評価することは、臨床試験を含むヒトの移植患者における腎臓の潜在的な安全性と有効性に関する、重要な情報を提供すると思われる。

ロックは次のように付け加えている。「このヒト前臨床モデルは、生きているヒトにリスクを与えることなく、ブタからヒト以外の霊長類への移植モデルの安全性と実現性を評価する方法です。この試験は、ヒトへの異種移植を阻む大きな障壁が克服されたことを示すとともに、ヒトへの異種移植の結果を最適化するために新たな知識が必要な点を特定し、さらに研究を進めるための新たな前臨床ヒトモデルを確立するための基礎を築くものです。」

この取り組みは、バイオテクノロジーのパイオニアであるユナイテッド・セラピューティック・コーポレーション (United Therapeutics Corporation)が支援しており、同社は革新的な異種移植プログラムを開始するためにUABに助成金を付与した。ユナイテッド・セラピューティクス社の子会社であるレヴィヴィコー (Revivicor, Inc.) は、ユーケーキドニー (UKidney™) と呼ばれる研究用の異種移植用腎臓の元となる遺伝子組換ブタを提供した。

レヴィヴィコーの最高科学責任者であり、世界初のブタと初のα-Galノックアウトブタをクローニングした初期の研究行った、先駆的な遺伝子工学者であるデイヴィッド・エイヤレス博士 (David Ayares, Ph.D.) は次のように述べている。「私たちレヴィヴィコーの全員が、UABにおける試験用10遺伝子異種腎臓 (ユーケーキドニー) の歴史的成果に畏敬の念を抱いています。このユーケーキドニーは、今後数年のうちに臨床試験を成功させ、FDAの承認を得ることができれば、透析を受けている何千人もの人々の命を救うソリューションになると確信しています。」

試験について

今回の査読付き研究は、80万人以上の米国人が腎不全を患っていることを考えると、野心的な研究であり、大きな意義がある。ほとんどの人が待機者リストに入ることさえもできず、待機者数を減らすために利用できるヒトの臓器はあまりにも少ないのが現状である。透析でもしばらくは生命を維持できるが、移植を受けることができる数少ない人たちにとっては、移植の方が生活の質が向上し、より長い人生を送ることができる。この遺体モデルの異種移植研究の各段階は、第I相異種移植臨床試験で行われるであろう行程に近似するものであった。

  • 腎臓は、病原菌のない、外科的に清潔な施設で飼育されているドナーのブタから摘出された。この腎臓は、ヒトの腎臓と同様に、保存、輸送、移植のための処理が行われた。
  • 手術の前に、脳死状態のレシピエントとドナーの動物は、遺伝子組換ブタの腎臓とレシピエントの組織が適合するかどうかを判断するクロスマッチ適合性試験を受けた。ヒトからヒトへの腎臓移植の際には必ずクロスマッチが行われるが、このブタからヒトへの組織適合性試験はUABで開発されたもので、2つの動物種の間で将来的なクロスマッチが検証されたのは今回が初めてであった。
  • ブタの腎臓は、ヒトのドナーの腎臓と同じ解剖学的位置に置かれ、腎動脈、腎静脈、腎臓から膀胱に尿を運ぶ尿管も同様に取り付けられた。
  • 脳死状態のレシピエントには、ヒトからヒトへの腎臓移植に用いられる標準的な免疫抑制療法が行われた。

本試験では、ヒトとヒトとの間の標準的な移植のすべての行程を組み込み、ヒトの第I相臨床試験に適用されるものと同等の基準を満たすように実施された。治験審査委員会および研究所動物ケア・使用委員会の承認、手術開始前の組織適合性の確認、ヒトからヒトへの移植の標準的な手順による腎臓の摘出、保存、輸送、移植、そしてレシピエントへの標準的な免疫抑制療法の実施などが行われた。

移植を受けたジム・パーソンズ氏 (Jim Parsons) は、臓器移植の未来への扉を開く手助けをした

この科学的・医学的な飛躍的進歩は、レシピエントであるジム・パーソンズ氏とその家族の協力がなければ実現不可能であった。

パーソンズ氏 (57歳) は、アラバマ州の臓器調達組織「レガシー・オブ・ホープ (Legacy of Hope)」に臓器提供者として登録しており、自分の死後、自分の臓器が他の人を助けることを切望していたが、彼の臓器は提供に適していなかった。パーソンズ氏の家族は、UABが研究期間中、パーソンズ氏の体の機能を維持するために人工呼吸器を使用することを許可した。パーソンズ氏の腎臓が摘出され、遺伝子組換のブタの腎臓が2つ移植された。

ロックは次のように述べている。「パーソンズ氏とその家族のおかげで、私たちは生きているヒトにこの移植を行う方法を正確に再現することができました。パーソンズ氏とそのご家族の貴重な貢献により、何千人もの命が救われることになり、それはごく近い将来に始まるかもしれません。パーソンズ氏の寄贈は、彼の遺産を尊重するとともに、この前臨床モデルの実行可能性、安全性、実現性をしっかりと立証するものです。パーソンズ氏の寄贈に対する感謝の意として、我々はこのモデルを『パーソンズモデル』と呼ぶことにしました。」

パーソンズ氏の元妻であるジュリー・オハラ (Julie O’Hara) 氏とその子供たち、アリー (Ally)、デイヴィッド (David)、コール (Cole) は、パーソンズ氏の姉妹と母親とともに、レガシー・オブ・ホープのアラン・スプリッグス (Alan Spriggs) とロックから連絡を受けて、この研究に参加することを決断した。

オハラ氏は次のように述べている。「ジムは、誰とでも話をする、気さくな、敵のいない人でした。ジムは自分の死でできるだけ多くの人を救いたいと思っていたでしょうし、もし自分がこのようなことをすれば何千何万という人を救える可能性があると知っていたら、何のためらいもなかったでしょう。私たちの夢は、腎臓の待機中に亡くなる人がゼロになることであり、ジムは自分の死が多くの人に希望をもたらす可能性があることを非常に誇りに思っていると思います。」

他の臓器提供のオプションの差し迫った必要性

米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所 (National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases) によると、腎臓病による死亡者数は、乳がんや前立腺がんによる死亡者数よりも多いとされている。移植は末期の腎臓病に対するゴールドスタンダードの治療法であるが、米国では毎年25,000件以下の腎臓移植しか行われておらず、毎日240人の透析を受けている米国人が死亡している。移植用の腎臓の供給量が無限であれば、これらの死の多くは防げるはずである。

死亡した腎臓ドナーの待機期間は5年に及ぶ場合もあり、多くの州では10年に近いと言われている。腎臓移植を待っている間に死亡する人は、年間約5,000人に上る。

UAB臓器移植・異種移植チームについて

UAB医学部 (UAB Medicine) は臓器移植の世界的リーダーであり、1988年1月1日から2021年12月31日までに9,055件の腎臓移植を実施しており、その間の腎臓移植件数は米国で2番目に多い。UABの異種移植プログラムの焦点は、遺伝子組換のブタの腎臓を腎不全のヒトに安全に移植することで、臓器不足を解消することである。詳しくはこちらを閲覧されたい。

UABについて

アラバマ大学バーミンガム校 (the University of Alabama at Birmingham) は、アラバマ大学システムの一部であり、大学院および学部レベルでの革新的かつ学際的なアプローチによる教育で知られており、国際的に有名な研究大学および学術医療センターである。UABは、年間の研究助成金が常に6億ドルを超えており、昨年は新型コロナウイルス感染症関連の一回限りの助成金を含めて、約8億5000万ドルに達した。UABはアラバマ州最大の単一雇用者であり、26,000人以上の従業員を擁し、2021年にはフォーブス誌で「アメリカのベスト大規模雇用者」に選ばれた。同機関が州に与える経済効果は、毎年70億ドルを超えている。UABのミッションの支柱は、教育、研究、イノベーションと経済開発、地域社会への貢献、そして患者ケアである。詳しくは、www.uab.eduを閲覧されたい。

編集者の注:アラバマ大学バーミンガム校は、アラバマ大学システムの3つの博士課程研究大学の一校である。当大学を最初に言及する際には、University of Alabama at Birminghamと表記し、それ以降はUABと表記されたい。

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